「私、郁ちゃんのことが、
ずっと好きだったの」
目の前で彼女はあいつに告白した。
彼女も振られることを覚悟の上で、
言ったのだと思う。
彼女もまた、郁翔が自分の方を
向かないことが目に見えていた。
……俺たちは、同じなんだ。
お互い、好きな人に好きな人がいて、
自分に振り向いてくれる
確率なんてなくて…。
手を伸ばせば、届きそうな距離なのに
”好き”なんて言葉すら、今の関係を
壊すことに怯えて言えない。
でも、言わなきゃ、
伝わらないことだってあるんだ。
だから、俺は言った。
彼女に好きだと。
今の関係を壊してしまうことだとは、
俺たち二人はよく分かってる。
けど、知って欲しかったから。
この伝えきれない想いを、
愛しい、って気持ちを。
