「ご…ごめん。私、今日はもう棗ちゃんと食べる約束しちゃってるんだ」

…なんて、咄嗟の言い訳を言って断ってきてしまって今に至るのだ。

からかわれて意識しすぎて、話もできなくなるなんて、私には恋愛は不向きかもしれない。

なんて自分は情けないんだろう……。


「あ、兄弟がグラウンドでサッカーしてる」

落ち込んでいる私の傍らで、もう会話に興味を失った棗ちゃんがグラウンドを見下ろして言った。



「えっ」

私は慌ててグラウンドを見下ろす。

確かにそこには、郁ちゃんと樹里くんがクラスの男子とサッカーをしていた。


「あ、兄がボール奪い取って独走中♪」

ぐんぐん走るスピードを上げて、巧みにボールを蹴っていく。


(かっこいいな、郁ちゃん……)


「頑張れ、郁ちゃん」


私は小さな声で呟いた。