「熱は?」
「あ、もうほとんど下がったみたい…」
「そうか。だからと言って
無茶だけはするなよ」
俺はひよりの頭を撫でた。
「うん……」
ひよりも俯きながら頷く。
「…で、そんな病み上がりに手を出す
不逞野郎」
俺は後ろに立ったままの樹里を振り返る。
「不逞野郎?聞き捨てならないね。
そっちだって、彼女いるくせに
幼馴染みばっかり優先してる
無意識女たらしじゃないの?」
樹里は負けじと突っかかってきた。
「…っ…お前──」
言い返そうとした時、
「彼…女…だったんだ…」
と、ひよりが小さく呟いた。
「あ」
樹里がまずいと言ったような顔で
自分の口を押さえた。
「…そうだよね。郁ちゃん、カッコイイし
優しいもんね…。
彼女がいないわけないよ」
ひよりはキュッと花束を握り締めた。
「ひより…」
俺がひよりに駆け寄ろうとしたとき、
「やめろよ」
樹里が俺の行く手を塞いだ。
