私と幼なじみと青春と


-放課後-

「オーケーオーケー!ナイスボール、健!」
「うん....。」
ブルペン内に私の声が響きわたる。
3年生が引退したから2年生がメインになった。
私は部活では守備の要のキャッチャーをやっている。
ポジション上、エースピッチャーの健と一緒に練習することが多い。
「健!次、カーブ!!」
「....うん。」
健は背が高く、手足が長いからピッチャーにはもってこいの体型だ。
健がおおきく振りかぶった。
いつも、健が振りかぶるとゾワッと何かのオーラみたいなのを感じる。
普段、大人しくて無愛想な健には似つかないオーラ。
一球、一球、大切に投げているのがキャッチャーミット越しにいつも伝わってくる。
「じゃあ、もう一球カーブ!」
「....うん。」
パァァァン....--
私のミットが乾いた音を出した。
健の投げるボールはとても軽やか。
「ナイスボール、健!じゃあ、最後にストレート投げて終わり!!」
「え、やだ。」
いつもこう。
「終わり」っていうと必ず「やだ」って返ってくる。
「だめ!」
「やだ。」
「だめ!」
「やだ。」
「だめだってば!」
「....あと20球。」
「うーん....。10球!」
「20。」
「じゃあ、もう受けてあげない!」
「わかった....。10球にする....。」
ミットを構えるとまた健がおおきく振りかぶった。
次の瞬間、パァァァンとミットの乾いた音がする。
手がジーンとする。
「お?なんか今の健が投げたボール、いつもよりはやくなかったか?」
「竜!」
後ろから竜が微笑みながら歩いてきた。
「他のキャッチャーが捕るより、一華が捕った方が健はいいボールが投げれるな。」
そう言い、竜はクスクスと笑った。
「竜。うるさい。」
「ハハハ。さぁもう切り上げて!Aチームはこのあとミーティングだ!あ、一華も残ってね。」
「あ、うん!」
私は正捕手ではない。
控えの捕手。てゆうか試合に私は出れない。
いくら出たくても私は女だから....。
「もー。また一華は変なこと考えてたんでしょ?一華は試合に出れなくてもみんなの心の中で一緒に戦ってるよ?一戦必笑!そのためには一華の笑顔も必要だよ!だからそんな顔しない!」
「りゅ、竜....。」
竜は昔から私の心の中が読める。
「なんで私の心の中が読めるの?」って1度聞いたけど「一華の顔に書いてあるよ。」って返されただけだった。
「それに、一華は....。ゴホン!さぁ、一華も健も行くよー!」
「え?なに?」
「....おう。早く行くぞ、一華。」
「う、うん....。」

-野球部ミーティング室にて-
「今からAチームミーティングを始めます。」
竜が始まりの号令をかけた。
「えーと、今回Aチームのみんなを読んだ理由は来月までに迫った地区大会のメンバーを発表するためです。」
ザワザワ....-
Aチームのみんながザワザワし始めた。
今回の大会でベンチに入れるのは20人まで、Aチームは全員で40人いる。
実はわたし達の通う南花中学校は名門校なのだ!
「はい!静かに!それでは発表します。背番号1番、ピッチャー、東野健!」
「....はいっ!」
私はビックリした。
いつも無表情で大きな声を出さない健が大きな声でしかも、目がキラキラ輝いていた。
それほど嬉しかったんだ....。
1番はエースナンバーの証。
いーなー。
名前を呼ばれるなんて....。
私には絶対ないことだ....。
「背番号2番、キャッチャー、南沢一華!」
え....?
わ、私!?
「南沢一華〜、返事しないなら背番号取り上げるぞー!」
涙が出てきた。
ずっと憧れてた二番。
二番は正捕手の証....。
「は、はぃぃぃ〜....。」
「なんだよー、その情けない返事は〜!」
「う、うぅぅぅ〜....。」
Aチームのみんなが拍手してくれる。
嬉し涙で前が見えない。
「それじゃあ続き発表するぞ!背番号3番ファースト西田太一!」
「おす!よっしゃゃゃあ!」
太一が吠えるように喜ぶ。
「良かったね!太一!!」
「あぁ!さんきゅ!一華もよかったな!また、一緒に戦えるな!!」
「....うん!!」
そうだ、また四人で野球ができる。
みんなで一緒にできる!
「背番号4番、セカンド、俺!!はい!」
みんながどっと笑った。
「ちゃんと監督に言われたとおりに言ってるからな!」
みんなは大爆笑だった。
「つぎに....」
その後も着々と背番号発表がされていった。
泣いてる人、飛び跳ねる人、選ばれなくて悔し涙を流している人....。
1人1人が、違う感情を持っていた。
「....。1つみんなに言わなきゃならないことがある....。実は南沢一華のことなんだけど....。

竜が私の方をチラッと見る。
「これは監督からの提案なんだけど、ヤッパリ女子は試合には出れないらしい。だから、南沢一華を男として選手登録するのはどうかって....。」
「え....。」
またみんながザワザワし始めた。
「え、でもそれってバレるんじゃない?」
誰かが口を開いた。
「うん。バレるのも時間の問題だと思う。だから、俺たち野球部全員で秘密を守って欲しいんだ。反対の人、いる?」
誰も手を挙げなかった。
「....南沢は男勝りだし、バレないだろ!プレーだって、男よりもスゲーし!」
そう言ったのは正捕手争いをしていた田中君だった。
「正直、正捕手になれなくて悔しいけど南沢にだったら譲ってもいいわ!」
「た、田中くん....。」
「そうだな!」「俺たちで南沢を守ろうぜ!」
「なんか、かっけーな!」
色々な声が聞こえてきた。
感動のあまりまた、視界が涙で埋まった。
その時、両肩と頭になにか乗った。
「良かったね。いい仲間を持ったね。」
「おめでとう。一華。」
「さっすが俺たちが認めた女だぜ!一華!」
3人は笑顔を私に向けてくれた。
私にはこんなにいい仲間と、こんなに大切にしてくれる彼らがいる。
「ありがとう!3人とも大好き!!」
「「「....!?///」」」
3人の顔が一気に赤くなった。
「3人ともどうしたの!?」
「はぁ〜....。これだから天然は....。」
「一華。腹立つ。」
「全くだぜ!」
なんのことだか、さっぱりわからなかった。