教室にいると、すぐに野川は来た。


「早瀬っ!」


かなり慌てた様子であたしの名前を呼ぶ

。それだけでもドキ、としたのは、意識

をしだしたからだろうか。


「………野川」


名前を呼ぶと、野川の胸ぐらを掴みこっちに引き寄せる。


「えっ、ちょっなに!?怒って…んむっ!」



半分体当たりのように唇を押し付ける。


それで唇が切れたようで、鉄の味がした。

口を離すと、口をあんぐりと開け、ものすごい間抜け面だ。


「………わかったかよ。あたしの気持ち、わからなくても言わねぇからな。察しろよ。」


そう言うと、野川の顔が今まで見たことないくらい真っ赤に染まった。

「……ぇと…好き、ですか…」


すごく恥ずかしくなり、あたしは顔を背ける。恐らく顔は真っ赤だろう。



「好きな奴にしかキ、ス、しねぇよ……」


「………ぁりがとう、ございます…」

敬語?

「なんで敬語なんだよ」


そう言うと、あれでもすっごく真っ赤だった顔がもっと赤くなった。

「ぅれしいから…」


「あたしも嬉しいよ」


そう言えば、野川は目を見開きこっちに身を乗り出しこう言った。


「おっ、俺っりょ、両想いとか初めてだ

しっ、そもそも、人を好きになったのだ

って早瀬が初めてだし……」


話す時間が長くなるにつれ、野川は俯く。


「………授業、サボるか」






時間は、授業まで残り5分だった。