誰よりも


そんな半端な気持ちでいたら、野川が「早瀬〜?早く練習しよー」と手を掴まれ体育館へひきずられていった。
こいつなりに気を利かせたのだろう。

そこは感謝、しなければ。

あたしの手は、無意識に高い位置にある野川の頭の上に手を置いていた。


*


無事部活が終わり、帰ってもいい時間だ。マネージャーはそれほど増えておらず、あたしと華ともう1人、『柴咲 郁』という、とてもクールな奴が入ってきた。

この3人は、野川目当てではいったんじゃなさそうだった。

…そして、それに安心した自分はどうにかしてたんだろう。きっと。


「早瀬!一緒にかえろー」

「う、わっ!?」

不意打ちで掛けられた声に驚いて、思わず声を出してしまう。
今まで野川のことを考えていたのだから尚更だ。

「え!?なに?そんなに驚いた!?」

「うっせぇ…誰がお前なんかに驚かされるか…ってか一緒に帰ろとかまじウザい。どっか行け」