小さいころから憧れだった。
好きな人とおっきな花火を手をつないでみる。
屋台でりんご飴を食べたりして2人で歩く。
でもきっと出来ない。
最寄り駅に貼ってある二子玉川の花火の広告を見ながらそんなことを思った。
私の家から学校までの途中にある。
1番近くの花火大会だ。
「さおり、いくの?」
声をかけてきたのは竜だった。
「りゅーー!すっかり焦げたね。」
しばらくみないうちに竜は焦げていた。
サッカー少年だからだろう。
「うっせ、とにかく帰ろうぜ。送ってくよ。」
線路沿いを竜と並んで歩いた。
空は綺麗で、赤みがかかった天井は途中から紫へと色付いていた。
「さおり、花火誰かとみにいくの?」
「うーん、まだ決めてない。でも行きたいなーって思ってる。」
「そっか、俺も行きたいなーと思ってたんだけど、、、
一緒にいかね?」
びっくりして竜を見つめた。
夕日に照らされた顔の頬には赤みが差していた。
「私と?」
「うん。そうじゃなきゃ1人で観にいくことになっちまう。」
ふむふむ。
一緒に花火を観にいく友達もいないなんて。
ちょっと可哀想になってしまった。
「うーむ、まぁいいよ。」
たっぷり同情の目を込めて竜を見つめたが、彼は全く気付いていなかった。
「よっしゃ、ありがとな。」
嬉しそうに目を細める竜はみてると幸せになれた。
きっと何人もに断られて私が最後の砦だったのだろう、、、。
「あ、そうだ。母さんがお前に飯食ってけってうるさいから今日こいよ。」
そういえば私も顔を合わせるたびに言われていた。
おばさんのことはとても大好きだ!
行きたくないわけではないけど、申し訳なくて断っていた。
「うーん、どうしよ。久しぶりにお邪魔しちゃおうかな!」
竜はパァッと子犬のような目をして嬉しさを伝えていた。
尻尾があったらきっとブンブンしていることだろう。
