広瀬さんは紅茶を私の目の前に置いた。


「好きに飲んでちょうだい。お代わりもあるからね。」



広瀬さんは私の隣に座った。



「でも、運命って不思議よね。」



そういって私のことを見つめる。

その目はもう細くはなかった。



「そうですね。」



彼と出会ってしまったこともきっと運命だったのだろう。




「さおりちゃん、なにかいいたいことあったらなんでもいっていいのよ。
自分の悩みでもいいし、
部活の話でも、
好きなことの話でも。
なんでもいいからね。」




広瀬さんは花に例えるなら白百合とかすずらんとかコスモスとかそういう花だろうなと思った。



「私どうしたらいいかわからないんです。

好きな人がいるけどその人を好きになっていいのか。」



広瀬さんになら話してもいいなと思った。



「なぜそう思うの?」


その問いかけにうつむく。



「……私は普通の女の子じゃないから。」



「それは性格の意味でってこと?」



「ううん、経験してきたことが違うの。きっといつか彼を傷つける。」



握りしめた拳には汗が滲んだ。




「あなたがなにを経験したのか、今は追求したりしないけど……

例えばあなたは一番仲良い子のことどこまで知ってる?」


私はとっさにゆきのことを思い浮かべた。


「あなたはその子のことをなんでも知ってると思ったとしても、
その子にはあなたのしらないたくさんの経験があるはずよ。


例えばその子が悪いことを昔にしていたとして、
今のあなたがそれを咎めることできるかしら?」



少し頭をひねる。



「答えはNOよ。

過去のことはだれも裁けないわ。
あなたの過去に起きたことに口出しする権利はだれにもない。
だってだれしも過去のことを書き換えることができたら苦労しないし、成長もしない。」


広瀬さんの言葉が体に沁みていくきがした。

ゆっくりゆっくりと液体をろ過して行くみたいに。


「もしそのことが過去のことじゃなくて今のことならそれにはしっかりと制裁つければいいじゃない。

あなたまだ若いんだから可能性を潰しちゃだめ。」



私は泣いていた。


自分で一瞬気づかないほどに。