躊躇いのキス

 



「買いすぎた……」


あのあと、智世と買い物をしたのはいいけど、久々の買い物&失恋ということもあって、
買いに買ってしまった服や靴たち……。

両手には、大量の紙袋が握られていた。



「ただいまー……」

「あ、おかえり!
 ちょうどよかった!」


玄関を開けるなり、お母さんとバッタリ対面した。

お母さんはコートを羽織っていて、明らかに今から出ようとしている。


「なんかお父さんが会社の人と飲みに行って、酔いつぶれちゃったみたいで……。
 ちょっと迎えに行ってくるから留守番お願いね」

「あ、うん」

「あとよろしくー」


そしてそのまま、お母さんは車のキーを持って出て行ってしまった。


お父さんってば、また飲み過ぎたのか……。


お父さんがこうやって酔いつぶれるのは、月に1回程度あって、
そのたびにお母さんは迎えに行っているらしい。

よくやるなぁ…なんて感心しながら、再び大量の紙袋を持って2階へと上がった。