躊躇いのキス

 
渡された雄介からの思い出の品。

それを見ても感動しなかった自分。
切なくもならなかった自分。

きっとそれは、雄介の言っていたことが正しかったということで……



「あ、たし………

 否定、出来なかったんだよ……」



信号が赤になり
車が停まった。

気が付けば、涙がじわりと浮かび、一粒だけ零れ落ちた。


「……じゃあ、お前にはその元彼よりもずっと好きだったやつがいたんだ?」


口を開いて出てきた言葉は
本人はまったく気づいていないといった言葉で……。

あたしは顔をあげ、雅兄の顔を見つめた。



「うん」



揺らぐことのない瞳を
雅兄にぶつける。


雅兄は何かを悟ったのか、ふいとあたしから目を逸らして
青になった信号を発進させた。