躊躇いのキス

 
「実はね……
 友達といたんじゃなくて……

 雄……元彼が会いに来たの」

「……へー…」


一瞬雅兄がちらりとこっちを見た気がしたけど、視線を合わさず言葉を続ける。


「振ったのは向こうなのにさ……

 なんかあたしのほうが振ったみたいになってて……」


「どういうこと?」



「お前には、俺以外にずっと好きな奴がいたんだろ?

 ………って…」



雅兄もその言葉に驚いていて
再びあたしへと視線を向ける。

だけどさすがに運転している身なので、すぐに視線は前に戻された。


「何言ってんだか……
 って感じだよね。

 もしそうだったら、雄介と5年も……付き合ってるわけないのに……」

「……」

「でも……
 いつも俺じゃない誰かを見ているような気がした、って……。
 最後に、ちょっとしたことで試されて……」