躊躇いのキス

 
「ごめん……。
 友達とちょっとお茶してたら……こんな時間になっちゃってて……。

 電車なくなっちゃった」

《あんたねぇ……。
 高校生じゃないんだから》

「ごめん……。
 今からタクシーで帰るよ」

《あ、そこってバイト先の近く?
 今、雅人くんが、あんたを探すために、車でそっちのほうまで行ってくれてるのよ。
 連絡して、迎えに来てもらいなさい》

「え……」

《じゃあ、お母さんたちは先に寝てるからね。
 鍵開けて、自分で入ってきなさい》


それだけ言うと、お母さんは携帯を切ってしまった。


まさか雅兄まであたしを心配して探してくれていたなんて……。

あたし、これでももう22歳なのに……
みんなして過保護なんだから……。


申し訳なさと嬉しさが入り混じりながら
あたしは雅兄に連絡をして、結局近くまで迎えに来てもらうことにした。