躊躇いのキス

 






「お客様、申し訳ありませんが間もなく閉店時間となりますので……」

「あ……。すみません……」



あれからどれくらいこうしていたのか……。

気づけば周りには誰の姿もなくて、店員さんに帰るよう促されていた。


頼んでいたコーヒーは、ほとんど手つかずのままひんやりと冷えていて、
すでに重くなっていた腰を持ち上げた。



「……やばい、電車……」



お店が閉まるということは、もう0時をまわったところで……。

実家までの電車は、もう終わっていた。


とりあえず、お母さんに連絡しなくちゃ、と思って携帯を取り出すと、そこにはお母さんからの着信が何度かあって、すぐにかけ直す。


《侑那?あんた、今何してんのよ!?》


すぐに出たお母さんの携帯からは、案の定怒っている声が返ってきた。