「学生の時、侑那に告白する前から、侑那の心にはべつの男がいた。
 だけど俺の気持ちに応えてくれて、そのままずっと付き合っていた、……だろ?」

「ち、が……」


違う、ときっぱり否定したいのに
なぜか喉で何かが詰まっているかのようにうまく言葉が出てこなくて……。


侑那の心にはべつの男がいた。


違う……。
あたしはもうあの時には、全然あの人のことなんか……。


「侑那は多分、いまだにその男のことが忘れられていない。

 だから俺と別れても、当時大事だって言っていた物がなくなっていたことに気づかないんだよ。
 それが俺からのプレゼントだったから」

「……」


まるであたし以上に、雄介はあたしの心を知っているようで……
雄介は手を伸ばすと、あたしが握り締めていた紙袋を取り上げた。



「今日は最後の悪あがき。

 もしこの忘れ物を侑那が見たとき、嬉しそうに笑ったり、必死に探していたものが見つかった、というような顔をしたら……

 もう一度侑那に告白するつもりだった。


 だけど……」


雄介は席を立つ。
あたしはそれを見上げているだけ。




「フラれていたのは、俺のほうだったみたいだな」




その言葉に、あたしは何も言い返すことが出来なかった。