「ありがとうございました」


お買い上げをしてくれたお客様に向かって、丁寧に下げられた頭。

もうすぐ今日の営業時間も終わる。
心の中でため息を吐いて、ゆっくりと顔を上げた。


だけどその途端、店内に自動ドアが再び開き……



「いらっしゃい……っ」



「ませ」という言葉は続けられなかった。



「……久しぶり」

「……雄介…」


そこにいたのは、数週間前に別れを告げられた雄介がいた。
 
 
「もうすぐ上がりだったよな。
 このあと、ちょっと話いい?」

「……うん…」

「じゃあ、近くのカフェで待ってるから。
 終わったら連絡して」


それだけ言うと、雄介は再び店の外へ出て行ってしまった。


「無理!」って心の中で叫んだのに、それを言い返すことすらできなくて
せっかくもうすぐ仕事が終わる!とテンションが上がっていたはずなのに、そんな気持ちがいっきになくなってしまった。


話って今さらなんだろう……。