躊躇いのキス

 
「思わない」
「なんで?」
「無理、だから」


正直に、そう伝える。

だけど当然、それだけじゃ意味なんか伝わってくれない。


「無理って何が?
 お前くらいなら、すぐに次が作れんだろ」

「……」


だから雅兄は鈍感なんだ。


小さいときだって、いつもあんなに雅兄のあとを追いかけていたのに、
どんどん女の子をとっかえひっかえ作っちゃってさ……。



「雅兄」

「ん?」

「あたしって、今でも雅兄にとって、ただの妹なの?」

「は?」



突然の発言に、雅兄は目を丸くさせていて
あたしの言葉をどう捉えるべきか困っている。

それでも聞きたくて
目を逸らさずに、雅兄の顔をじっと見つめた。