躊躇いのキス

 
「……それ、まだ渡してなかったんだね」

「ん?ああ」


「それ」と言うのは、
先日、雅兄があたしの店で買ったネックレス。

彼女への誕生日プレゼントとして購入していた。


「今、フライト中でさ。
 今週末まで帰ってこないんだよ」

「……そうなんだ…」


そんなことまで聞きたくない。

けど、雅兄は構わず話を続けた。


「お前は?」
「え?」

「お前は次作ろうとか思わねぇの?」

「……」


それを雅兄に聞かれるのは、
自分にとって残酷すぎて……。


自分の気持ちを自覚してしまった以上、ほかに好きな人を作るなんて絶対に難しい。