(髪おろしてたほうがいいな)
家を出て、ふいに思い出された言葉。
今の自分の格好は、部屋着のままだから上下揃いのスウェット。
化粧もしてないし、髪の毛もずっと一本縛り。
それでも……
「……」
少しでもいいように見られたいからかもしれない。
邪魔くさくて一本にしばっていた髪をほどき、隣の大きな家のチャイムを押した。
《はい?》
「あ……宮入です」
《はーい》
インターフォンで出たのは、おそらくお手伝いさんの丸山さん。
両親が海外働きでいないことが多いし、おじいさんも学園の理事の仕事で忙しいので、こうやってお手伝いさんが専属でいるのだ。