「ありがとうございました」


店内を一周して、何も買わずに出たお客様に一礼。

今回もダメだったか……。

と、心の中でため息を吐いた。


やっぱりこの時期は全然売れない。
来月になれば、バレンタインも過ぎてホワイトデーになるので、売れ行きはぐんと変わるけど……。


でも売れもしないのに
にこにこと笑顔を振りまくのは、やっぱり疲れるものだ。



閉店時間が近づくころ、お客さんも店内にはいなくなっていて、暇を持て余しながら店内のショーケースの中を軽く整頓。

店長はやっぱり売り上げのことを気にしているのか、資料を片手に計算をしているようだ。


このまま今日は、お客さんが入ることなく閉店かな。


そう思っていると、自動ドアが開いて
ゆるんでいた顔を営業モードに切り替えた。



「いらっしゃいませ」

「いらっしゃいました」

「!!」



くるりと振り返った先には
人の顔を見て面白そうに含み笑いをしている雅兄がいた……。