「………お前さ…」

「え?」


だけど、雅兄は怯むことなんかなく、
あたしの頭にまでそっと手を伸ばしてくる。

何をされるのか全然想像つかなくて、
ドキドキと高鳴る鼓動に縛り付けられているように、身動きが取れなかった。



パサッ……

「…っ」



後頭部まで腕が伸ばされたと思うと
途端に流れ落ちる髪。


一つに束ねていた髪が、いっきに解放され顔の前まで流れ落ちた。




「髪の毛。
 おろしてたほうがいいな」


「……」




少しだけ微笑を浮かべ、
柄にもない言葉を吐いている。


「当たり前でしょ」なんて文句も言いたいのに
そんな言葉なんか、一字一句も出てこなくて……。