躊躇いのキス

 
「ちょっとっ……。 何すんのっ……」
「お前が凹んでるから」
「だからって……」
「昔から、お前は抱っこされるのとか好きだったじゃん」
「い、いつの話っ?!」
「幼稚園くらい?」
「あのねぇっ……」


確かに、雅兄に抱っこされるのが好きだった。

不安になったり、怖かったり、痛かったり……
そんなとき、雅兄に抱っこされたり、抱きしめられるとすごく安心して、
ずっとずっとこの腕の中にいたい、って小さい時から思ってた。


だけどいつの間にか、
この腕は他人のものになり……

あたしも別の人の腕の中にいるようになった。


「……ってか、重いでしょ」
「かなり」
「もうっ……!!」


本当に、人のことを女の子扱いしていないんだから!!


がばっと起き上がって、あたしの下に仰向けになっている雅兄を睨んだ。