躊躇いのキス

 



あー、脚がもうパンパン……。

帰りの電車を降りて、最寄駅から歩きながら、もう心の中で悲鳴を上げていた。


ずっと近い距離に慣れてしまったせいで
乗り換えありの1時間近くの電車は足に堪えて……。

しばらくはお風呂のマッサージを欠かせないな……

なんて思った。



「ただいま」
「おかえりなさい。
 あ、雅人くん、来てるわよ」
「え……」


疲れて帰ってきた、っていうのに、なにその当たり前の発言……。

雅兄を気に入っているお母さんは、ご機嫌のようで鼻歌まで歌っている。


ったく……
隣にだだっ広い家があるんだから、そっちにいればいいのに……。



憂欝な気持ちのまま、自分の部屋の扉のドアを開けると、
やっぱり当たり前のように人のベッドで寝ている雅兄。


こっちがそのままベッドにダイブしたいくらいだって。