躊躇いのキス

 
「え、奏人さん。教師なの?!」
「そー。俺んとこの学校で物理の先生やってるよ」
「うわっ……想像つかない……」


あたしの中での奏人さんと言えば、
雅兄よりもずっと腹黒い男。

第一印象は、すごく物腰柔らかそうな優しい人。と思ってきゅんとなってしまったが、
口を開けば毒舌、鬼畜、女たらし。………らしい。


あくまでも雅兄が言っていたことなので
どこまでが本当なのか知らないけど。


 
「ま、そんなあいつが、うまいこと大人気のセイセーやってるから、俺なんか全然やってられるよ」

「……」


ははっと笑い飛ばす雅兄に、何も言い返すことができなかった。



「じゃ、俺は車だから」
「送ってくれないんだ……」
「お前なんか送ったら、俺が遅刻する」
「……」


とか言いながら、
結局乗り換えの駅まで送ってくれる雅兄は
なんだかんだ言って優しいのかもしれない。