躊躇いのキス

 
「なっ……
 言っとくけど、普段はこんなんじゃないよ!」

「へー」

「かなり大人の振る舞いなんだからね」

「あ、そー」

「ちょっと!
 真面目に人の話を聞いてよ!!」


雅兄は、聞くだけ無駄、といったように、スタスタと駐車場まで歩いてしまって、その後を慌てて追いかけた。


「お前が大人とか、意味わかんねぇんだけど」

「あーのーねー……。

 じ、自分だってスーツなんか着ちゃってさっ……」

「それ、関係なくね?
 教師なんだから当たり前なの」

「べつに、私服の教師なんかいっぱいいるじゃん」

「バカか。
 スーツのほうがモテんだよ」

「……」


やっぱり、少しでも雅兄に再度ときめいた自分がバカだ。


雅兄は何も変わってない。

この人は、あたし以外の人にモテたいのだ。