躊躇いのキス

 
「で?どんな意図で贈るの?
 ファッションとして?それとも……」

「エンゲージ」

「……」


なんとなく、予想はしていたけど……
いざ雅兄の口から出されると、予想以上に心がえぐられる。

今にも泣き出しそうだったけど、ぐっとそれを堪えて、雅兄をエンゲージリングのショーケース前に連れて行った。


「ここがエンゲージリング」

「すげぇ量があるんだな……。
 俺からしてみれば、全部同じに見える」

「違うよ!
 ダイヤの大きさもそうだけど、リングのデザインとか色味とか!
 手入れ方法だって変わってくるんだから」

「あ、そう」


男と女の違いからなのか……。
すでに温度差。

好きな人の彼女のために力説するのは嫌だけど、やっぱり従業員としてのプライドもある。


「じゃあ、お前がいいって思うのいくつか出して。
 そこから選ぶ」

「え……あ、うん…」


それではたしていいのだろうか……。

でもそれ以外、雅兄は意見を変えなさそうだったので、
従業員としてずっと気になっていた数点の指輪を理恵子先輩に出してもらうことにした。