躊躇いのキス

 



「ん。じゃあ」

「うん……」


映画が終わって、そのまま帰ったあたしたち。

会話らしい会話もしなくて、気まずい空気のまま家に着いてしまった。


あたしの家の前で、
雅兄は一言言うと隣の自分の家のほうへ行こうとしてしまって……



「ま、雅兄っ……」


あたしは思わず、その背中を引き留めてしまった。

雅兄はゆっくり振り返ると、


「また、雅兄に戻るんだ?」
「あ……」


言われて思い出す。

さっき、あの瞬間、
雅兄のことを、雅人と呼んだことを……。


「え、でも……
 いいの……?雅人…なんて呼んでも……」

「……さあ?」

「え……」


自分で吹っかけておきながら、そんな返し。

相変わらず、読めない顔で微笑んでいる。