薬品と恋心


ティアが逃げる算段をしているのに屋敷の中はいつもとかわらず静かなものだった。


深夜というせいもあるが、扉の前に人の気配はなく、監視さえされていない。


それはつまり、ティアのこれまでの態度が効を奏しているからだろう。


昼間に叔父が様子を見にやってきたのをいつも通りの態度でやり過ごし、逃げる意思などまるでないように思わせた。


あきらめたように力なく頷く姿に逃げる気力などどこにもないと思ったにちがいない。


そう思わせておいたとしても、警戒をゆるめてはいけない。


ーこの屋敷を出るまでは。


鞄をななめがけにし、その上からフード付きの上着をはおる。


そして、そっと扉を開けた。