薬品と恋心


特に大きなトラブルは発生しないまま、式の準備は滞ることなく進んでいく。


結婚を明日に控えた日の深夜、ティアは行動をおこした。


そっとベッドから起き上がると静かにカーテンを開け、月の光を招き入れる。


窓のかたちに淡い光が差し込み、ティアのシルエットを床にうつし出す。


月はティアが逃げるのを応援するかのように暗い部屋を明るく照らしだしてくれた。


その月明かりを頼りに荷物を手早くまとめる。


最低限の衣類、筆記具、わずかばかりのお金。


今まで隠しておいたくるみやナッツ、ドライフルーツなどの食べ物も包んで鞄に詰め込んだ。


まさかこの日のために保存のきくおやつを毎日頼んでいたとは夢にも思わないだろう。


もともと少ない荷物はあっという間に鞄の中に収まっていく。


最後に赤いスカーフを鞄にしまいこみ、荷造りは終了した。