ここはノルヴァンシュタイン城。


王族の住まう城だ。


まさか憧れていたところに行くどころか住まわせてもらうなど、みすぼらしい下町生活を送っていた数ヶ月前の自分では考えられなかった。


ジーニアスがあやうく望まぬ結婚をさせられそうになっていたティアを助け出し、今は婚約者として城に住まわせてくれている。



ー婚約者…。



ジーニアスと想いが通じあってから数ヶ月。


ジーニアスは仕事が立て込んでいるらしく、ここしばらく会うことができていない。


窓の外に映る夕陽は寂しくも儚げな印象をティアに与える。



「会いたいな…」



沈みゆく夕陽を見つめながらティアは愛しい人に想いを馳せた。