「…お願いだ、レティシア。協力してくれないか」



片膝をつき、胸にこぶしを当てて苦しそうに声を出すジーニアスをしばらく見つめた後、仕方ないわね、とレティシアは息をついた。



「…いいでしょう、私にできることなら聞いてあげてよ」



「ありがとう、助かるよ」



ジーニアスはティアがいなくなった状況と、手がかりになりそうな人物の特徴を手短に伝える。


レティシアは少し難しそうな顔でそれを聞いていた。



「なるほどね。舞踏会に来ていた人の中からその人を探せ、というわけね」



言いながらレティシアは腰を上げ、扉へ向かう。



「…できそうか?」



その背中に声をかけると、レティシアは首を傾けてジーニアスを見た。



「ふふっ。貸しは大きいわよ?」



指を艶のある唇に当てて不敵な微笑みを浮かべるとレティシアは部屋から出ていった。