窓から差す木漏れ日が部屋の中をやわらかく照らす。


頬を撫でる風は心地よく、視線を少し上向ければ小鳥たちが楽しそうに戯れている。


もし、ここがゲオルグの屋敷でなかったならどんなによかっただろう。


ティアは窓枠にもたれかかりながら軽く息をついた。


ジーニアスと別れて数日後、ティアを待っていたのは幽閉生活だった。


当然の如く持ち物はすべて、着ていた服すらも奪われ、今はゲオルグが用意させたドレスを着せられている。


ティアは胸元に手を当て、そこに隠したものを確認する。


唯一、手放さずに済んだのはジークのスカーフだけ。


ここに着いたときに着替えを手伝ってくれたメイドが見逃してくれたものだ。


メイドは見るからに古いスカーフなどたいしたものだと思わなかったらしく、あっさりとそれを渡してくれた。


そこに刻まれた家紋の意味と価値がわからなかったことにティアは心底ほっとした。


しかしこれもゲオルグに見つかれば取り上げられてしまうだろう。


それだけはなんとしても避けなければいけない。