頭に浮かぶのは楽しそうに店を見てまわるティアの姿。
ーあの姿が最後だったなんて信じられない。信じたくない。
ー嘘に決まっている。
ティアは帰ってきたら専属契約をすると約束してくれた。
ーここに、自分のもとに帰ってくるはずなんだ。
ジーニアスは紙をくしゃりと握りしめると、女将を振り返った。
「荷物を取りに男が来たと言いましたよね。どんな人だったんですか?」
「そうだねぇ。確かひとりは身なりはそこそこ良い太めの男だったねぇ」
「ひとりは?…ということは何人かいたんですか?」
「ああ。二人いたよ。もうひとりは…あまり身なりは良くなくてね。よれた帽子をかぶった髭の男だったよ。…あまりかかわり合いになりたくない感じだね」
ー帽子で髭の男。
それを耳にしたジーニアスの表情が一気に険しくなった。

