薬品と恋心


「確かにいたね。でも、あの子は泊まってないよ。チェックインしてちょっとしてからだったかねぇ。男があの部屋の荷物を取りにきてね。んで、泊まらないから宿泊をキャンセルしてほしいっていうのさ」



「な…!!」



「まったくねぇ。勝手いわないでほしいもんだね。こちとら生活かかってるっていうのに」



女将は少し鼻息を荒くして悪態をついた。



ーティアの荷物が何者かによって持ち去られた?


ティアはこのことを知っていたのだろうか?


ジーニアスはドアに手を当てたが、ドアの向こうには人の気配は感じられない。



「…本当に…いない…のか…?」



ーどういうことだ。何が起きているんだ。



「信じられないって顔してるね。ああ、なんだったら見てみるかい?」



「あ…はい…」



「ちょっと待ってな。ああ、これだ」



女将はポケットから鍵の束を取り出すと、そのうちのひとつを鍵穴へと差し込んだ。