あれは一体どういうことなのだろう。


ひとり宿に戻ったジーニアスはベッドに寝転びながら考えていた。



ーティアに会いたい人がいることは知っていた。


舞踏会に行きたがったのも、その人がいるからなのだと思っていた。



ーティアの想い人がいるのだと。



だから、舞踏会のあとティアに触れるのをためらった。


ティアの成長をとめ、こんな生活をさせた原因である自分がティアを引き留めていいわけがない、と。


諦めようとも思った。
でも、ティアを手放したくなかった。



ーだけど。



まさかティアの会いたかった人がジーク…自分だとは思わなかった。


思いもよらなかったティアの言葉に嬉しくなったが、ティアの好きな人はジークではなかった。


ティアが好きな人とうまくいくように協力するべきなのに、あまりの衝撃にそれができそうになかった。


せめて、自分がジークだというべきだと思った。


言おうとしたとき、今言うべきではないとばかりに鐘が鳴った。