「さあ、行こうかジェンティアナ。荷物は取ってきてあるからな」



そう言いながらゲオルグはティアの肩に手を置いた。



「…触らないでください。あなたのものになると言いましたが、まだ私は正式な花嫁ではありません」



ティアは置かれた手をパシンッと払いのけ、冷たく言い放った。


ゲオルグは一瞬驚いたように目を丸くしたが、すぐにもとの不敵な態度に戻った。



「ふん…まぁいい。どうせお前は逃げられないのだからな。そんな態度をとっていられるのも今のうちだ」



ー確かに逃げられない。



しかし、逃げるつもりは初めからない。


ただ、心だけはゲオルグに渡すつもりはない。


行くぞ、と先を歩くゲオルグの後について歩き、ティアは門をくぐり抜けた。


門を出たところに馬車が停められており、ティアはそこに乗せられた。


馬車が走り出し、窓の外に見える門が次第に遠ざかっていく。