重ねあった時間は数秒だったかもしれない。


だけどそれはとても長く感じた。


濡れた音をたてて唇を離すと、驚いて固まったままのジーニアスが瞳に映った。



「…ごめんなさい。じゃあ、私は行きますね」



ティアはジーニアスに微笑むとすぐさま踵を返して走り出した。


目指すは外へ続く町の門。


そこでゲオルグが待っている。



ーもう戻らない。



ーさよなら、ジーニアス。



ティアの瞳から零れた一滴の水が地面に綺麗な円を描いていった。