耳元で囁くとティアは少し身じろぎしたあと口を開いた。
「いいえ」
静かな、ハッキリした声が耳に届く。
ー今、ティアはなんて言った?
ティアの口から出た言葉に頭が真っ白になる。
ティアの口から出たのは否定の言葉。
胸を軽く押されて腕を緩めると、ティアはうつむいて苦しそうに言葉を続ける。
「ジークには…このスカーフの持ち主に会いたいという気持ちはあります。でも…」
「でも?」
ティアは自分の胸に当てた手をぎゅっと握りしめると、勢いよく顔を上げた。
「私には他に好きな人がいるんです」
ジーニアスを見てはっきりとティアは言いきった。
その顔は切なさや苦しさがにじんでいる。
言いたくても言えない、どうしようもない想いを抱えていることを訴えているかのようだった。

