それから特に問題もなく幌馬車は進み、町を取り囲むようにそびえ立つ塀の門前に着いたのは昼から二時間ほど過ぎたころだった。


ティアはジーニアスと門をくぐり、町の中へと足を踏み入れた。



「ティア、仕事までにはまだ少し時間があるよな?どうする?」



ジーニアスには仕事が夕方から入っていると伝えている。



ーしたいことなら、ある。



それにはジーニアスの協力が必要だったが、聞いてもらえるかはわからない。


ティアはためらいがちに口を開いた。



「…ジーニアスにひとつお願いがあるんですが、聞いてもらえますか?」



ティアは隣を歩くジーニアスをおずおずと見上げた。