「馬車で行きますから…そ、それにっ。私よりもレティシア様についていなくてはいけないのではないですか?」



ティアはレティシアの名前を出してどうにかジーニアスを止めようと試みる。


しかし、



「レティシア?…あぁ…大丈夫。問題ないよ」



ジーニアスはティアの言葉に少し怪訝な顔をしながらも意思を曲げるつもりはないらしい。


何か悪いことでもあるのか?と言いたげな眼差しを向けられ、ティアは押し黙った。


これ以上押し問答を続けると不審に思われるかもしれない。


理由を聞かれることは絶対にあってはならない。


婚約発表を控え、目前に幸せが待っているであろう人を危険に晒すわけにはいかないが、連れていかないと納得してくれそうにない。



(仕方ない…。どうにか巻き込まないようにするしかない)



気は進まなかったが、ティアにはそうするほか道は残されていなかった。