「あなたは誰なんですか…!」
ティアは警戒を緩めることなく、相手の顔を見ながら強く言い放つ。
「覚えていないのか!?」
「…」
舞踏会で会ったが、それは今言う必要はない。
ティアが何も答えないでいると、男は声を荒げた。
「本当に覚えていないのか!?ゲオルグだ。ゲオルグ・シュタットフェルトだ!!」
「ゲオルグ…?」
その名前に聞き覚えがあり、ティアは目を見開いた。
ーゲオルグ・シュタットフェルト。
シュタットフェルト男爵家の息子だ。
確か、小さい頃に親に連れていってもらった貴族の交流会で何度か会ったことがあるような気がする。
小さなころに会った数少ない貴族の名前だったために覚えてはいるが、顔は覚えていない。
最後に見たのはいつだっただろうか。
そのぐらい思い出と化していた彼にいきなり会ってもわかるはずなどなかった。

