「…ーだろ」
「それにしても…ーどうにかならなかったのか」
「…ーお嬢さんだと…ーー痛い目みるぞ」



近くでボソボソと話す声が聞こえてきて、ティアは瞳をうっすら開いた。

ぼやける視界の先に男がふたりいるのがわかる。

ひとりは小太りの男。なんとなく見覚えがあるような気もする。


その人と話している人物にゆっくりと目を移した途端、頭が一気に覚醒し、ティアは跳ねるようにとび起きた。


そこにいたのは、ティアに剣を突き付けた人物、あのチューリップハットの男だったのだ。



(……ー痛っ!)



急に動いたせいかズクン、とお腹が痛み、ティアは自分の身に起こったことを思い出した。



(…そうだった。私はこの男に殴られて…どうなったんだろう?)



そこからの記憶がない。しかし、場所があの路地からどこかの民家らしき家に移っているところを見ると、気を失っている間に運ばれたのだろう。


ーつまり。



ーここは追手の手の中ということだ。