「逃がすものか!!」
がしっと肩を掴まれ、ティアは目を見開いた。
(そんな!!どうして!?)
ティアの短剣にはかすっただけでも痺れる毒が塗ってある。すぐに動くことなどできないはずだった。
「はっ。こうなる可能性は想定済みだ。俺が何も対策をしないわけないだろう?」
怒りをその目にたたえながら男は口を歪めて笑った。
驚きと恐ろしさから足が震え、動かない。
「少し寝ていてもらおうか」
ドスッという音が耳に聞こえたのと同時に鈍い痛みが体に走った。
「ー…う…っ…」
視界は一瞬のうちに暗くなり、ティアはその場にくずおれた。
「まったく手間かけさせやがって」
男はひとつ息をつくと、落とした剣を腰におさめ、気絶したティアを肩に担ぎ上げて路地から去っていった。