ー早く。
ー誰か気付いて。
「来なければお前の大事なものを奪うと言っていたな」
「私にそんなものなんて…」
「あるかないかはどうでもいい。俺の仕事はお前を依頼主のところへ連れていくことだ」
男はしびれを切らしたのか苛ついたように言い放った。
ここで話を終わらせてしまってはまずい。
どうにか間を持たせなければ、逃げることはできなくなる。
再び通りに目を向けると、男の後ろに影が見えた。
徐々に近づいてくる影は何か荷物を持っているらしく、よたよたとふらついていた。
ー声に気付いて。
「…そうでしたね。それにしても、剣を突きつけるなんて…私が恐いのですか?」
「なっ…!!」
男の目に怒りが宿る。
ーもっと。
ーもっと怒りにうち震えろ。

