薬品と恋心


しばらく走り、ティアは路地に身を潜めた。


上がる息をどうにか押し殺し、周りをうかがう。

路地には誰もいなかった。


ティアは壁に背中を張り付けるようにして立ち、人がまばらに行き交う通りに全神経を集中させる。



(…撒けたかな)



ティアを追うことができなかったのか、先ほど感じた視線はどこかに消えていた。



(…それより、ここはどこ?)



土地勘がないところを無我夢中に走ってきたせいで今いる場所がわからない。


ティアは片手に握りしめていた地図を広げた。



(何か目印になるようなもの…ーーっ!?)



地図に目を落としていると、地図の上に影が落ちた。


同時にざわりと身が総毛立つ。


ゆっくりと視線を上げると、そこにはー



ーあのチューリップハットの男がいた。