薬品と恋心


その日は朝からなんだか変だった。



ー見られている。



屋敷を出てしばらくして視線を感じたティアは目を走らせた。


しかし、そこには誰もいない。


ティアはできるだけ人通りのある道を歩いていく。もし何かあったとしても、すぐに助けを求められるからだ。


行き交う人が増えるにつれ、ティアを見失うまいとしてか、さらに視線が強くなる。


もしかしたら私ではないのかもしれないと思ったりしていたが、町に着いてもそれが消えることはなく、自分が狙われているのだと確信した。


地図を持つティアの手に自然と力が入り、紙製の地図はクシャッと音をたてて手の中で少し形を変えた。



(…撒けるかな)



人の多く行き交う大通りまで来るとティアは一目散に走り出した。


縦に横に、縦横無尽に。地図に頼らず、人の波をかき分け勘に頼ってひたすら走り続ける。