ジーニアスが慌ただしく部屋から出ていったのを見計らって、男が柱の影から姿を現した。



「…行ったか」



小太りな体を揺らしながら男は回廊に足を踏み出した。


小太りな体は柱には隠れきらなかったのだが、運良くジーニアスが男の側に来なかったのだ。



「それにしても、あの部屋の中で一体何を…?」



男はジーニアスが歩いていった方向を睨みながら部屋に近づいていく。


男の頭にあるのは会場にいた銀糸の髪をした美しい少女のことだ。


ダンスを申し込むもあっさりフラれ、さらに仮面の男に横取りされた。


その上、別の男に彼女が人目を避けるようにして連れ出されるのを目撃してしまい、ついここまで追いかけてきてしまった。


部屋に入ってから数分とたたないうちに慌ただしく男が出てきたというのはどういうことだろう。



(まぁ、見てみたらわかるか…)



男は部屋の前に来るとゆっくりとドアノブに手をかけた。