薬品と恋心


「ここならいいでしょう」


ふいに頭上から声が落ちてきて、ハッとして前を向いたとたん目に入ったのは綺麗な庭園。


先ほどの騒がしさは嘘のように、静かな空間が広がっている。


いつの間にかティアはテラスに連れ出されていたらしい。


仮面の男は肩から手を放すと、テラスの手すりに軽く背中をあずけてこちらを向いた。



「さて、と。貴女は誰とこちらへいらっしゃったのですか?パートナーはどなたなのです?」



ひとりでいることを咎めるかのような言い方をされて、ティアは一瞬言葉に詰まった。



「…レティシア様と来たんです」



「レティシア様?…ああ、では貴女がジーニアスの」


レティシア、という名前だけですべてわかったらしく仮面の男は姿勢を正し、流れるようにお辞儀をした。



「これは失礼しました。貴女のお話は伺っておりますよ」



「…私の話を?」



「ええ。ふたりから聞いていまして、一度お会いしてみたくて少し持ち場を抜け出してきたんですよ」


言いながら仮面を人指し指でトントンと軽く叩く。


だから顔を隠していると言いたいらしい。