薬品と恋心


まず目に入ったのは赤銅色の髪。
そして顔の上半分だけ隠すような派手な装飾の施された仮面。


仮面舞踏会で使用されるであろうそれを着けた男がそこにいた。



(…ジーニアス…?)



一瞬そう思った。
しかし、彼から発せられる声はジーニアスのものではない。



「彼女は私の連れなのです。手出ししないでいただきたい」



仮面の男はそう言ってティアの手を男からほどき、肩を抱き寄せた。


目の前の男に見せつけるように「待たせて悪かったですね」とティアに囁くと、ティアの肩を抱いたまま歩きだした。



「…あの…」



「しばらく我慢して下さい。あの男に連れではないことがバレてしまいますよ」



そう言われてしまっては黙って歩くしかない。



(この人はいったい誰なんだろう…?)



肩を抱かれているというのに、そんなに嫌な感じはしない。


これはあのしつこい男から守ってくれたという安心感から来るものなのだろうか。



ー違う。そうじゃない。