薬品と恋心


視線を落として軽くため息をついたとき、



「美しいお嬢さん」



声をかけられてティアは顔を上げた。


そこには貴族らしき男性がいた。


歳は25ぐらいだろうか。


少しふくよかな体を仕立ての良い服に押し込んでいる。



ーああ、まただ。



ティアは内心うんざりしていたが、嫌な顔を向けるわけにはいかない。


次に耳に入るセリフは目に見えてわかっていた。


「私と一曲踊っていただけないでしょうか?」



男性は手を胸にあて、綺麗なお辞儀をしてティアをダンスに誘った。



「すみません、連れを待っていますので」



ティアは申し込みを間髪いれずに断った。


先ほどから幾人かティアにダンスを申し込んでくる男性がいたが、ティアはそれをすべて断っていた。



ーダンスは好きな人と踊りたい。



そう思っていたからだ。