重厚な扉を開けて案内された先に足を踏み入れた瞬間感じたことはーここは別世界だということだった。


広くきれいなホールを見上げれば大きなシャンデリアが光を反射してまばゆくきらめいている。


横に目を走らせれば、見たこともないような料理が上品にセッティングされているテーブルがあり、音のする方に目を向ければ音楽隊が優美な音を奏でている。


ホールの中心ではダンスを楽しむ人たちが優雅なステップを踏んでいた。

レティシアとジーニアスは慣れた様子でその中を進んで行く。


二人に恥をかかせてしまうことだけは避けたかったため、ティアは貴族女性のように振る舞うことにした。


でしゃばらず、控えめに。そして優雅でありつつ凛とすること。


もう使うことはないと思っていた貴族教育がこんなところで役にたつとは思わなかった。


小さなころに習った基礎的な動きは特に意識せずともできるのだが、一応頭の中で確認する。